第一王子に、転生令嬢のハーブティーを

17.真夜中のお茶会




 先ほど落として割ってしまったティーカップを片付けてから、アリシアはミハイルから瓶を受け取った。



「カモミール、ですか」


「はい。僕がつくっている中で、一番自信があるハーブです」



 少し意外な気がする。カモミールといえば、割と定番のハーブティーだ。もっと珍しいものが出てくるとばかり思っていた。


 アリシアのそんな思いを察したのか、ミハイルは頬をかきながら言う。



「『最高のハーブティー』なんて言ってしまった手前、何にするかかなり考えたのですが……結局、下手に珍しいものより、自信のあるものの方が良いかな、と」


「カモミールティーは好きですよ。ミハイルさんがそう言うなら、本当に美味しいカモミールなんですね!」


「保証いたします」


「じゃあ早速淹れましょう!」



 定番のハーブでも、ミハイルの自信作と聞くとかなり期待が高まる。

 だが急いでアリシアがティーポットを用意しようとすると、何故か止められた。



「そのポットは使いません」


「え?」



 給湯室にあるポットではいけないというのか。専用のものでもあるのだろうか?


 訝しげな顔をするアリシアに、ミハイルは悪戯っぽく笑った。



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