第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


「呼んだのは私だが、婚約者との時間を邪魔しないようにという気遣いくらいして欲しいものだな」


「……すみません」



 デュランは初めて存在に気がついたというようにアリシアをちらりと見た。

 無気力そうなその瞳はイルヴィスと同じ深い緑色をしている。



「まあ良い、せっかくの機会だ。アリシア、デュランとそちらのメイド殿に自己紹介しておくといい」



 イルヴィスに言われ、アリシアはかすれ気味の声で名乗った。



「アリシア・リアンノーズです。以後お見知りおきを。デュラン様のことは存じ上げておりますわ」



 本当はデュランだけでなくそのメイドのことだって知っている。口には出来ないが。

 

「はじめまして、アリシア様。メイドのニーナです」


「そうだ、彼女はただのメイド。何も特別な存在ではない。そうだなデュラン」



 深く頭を下げたニーナが名乗ってすぐ、イルヴィスがどこか棘のある声を上げた。その言葉に、デュランはどこか悔しそうにうつむく。


 その様子に、アリシアははっと理解した。



(この二人は既に、『王子とメイド』という関係以上だと周囲に思われるくらいの仲なのね。……漫画の通りだわ)



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