第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 そう言われるのには慣れている。普通はなかなか貴族の令嬢がこんな使用人のような真似を進んでしない。

 嫌味っぽく言われることもあるが、ミハイルは純粋に驚いているという感じだった。



「趣味、ですか。茶を淹れるのが」


「ええと、もっと言えば、ハーブや薬草を扱うのが好きですね。まあ確かに、ハーブティーはブレンドを考えたりするのも楽しいし、一番の趣味かも」


「それでこの温室を気に入ってらっしゃるのですね」


「はい。あ、でも王宮の庭はどこも素敵です」



 アリシアは答えながらも、恍惚とした表情でガラスのポットを眺める。じわりじわりとレモングラスの成分が抽出されていく様を見ていると、どこか穏やかな気分になる。



「そろそろ良いかしら」



 3分ほどして、アリシアは2つのティーカップにポットの中身を分け入れ、一方をミハイルに渡した。


 一口飲めば、特有の爽やかな風味が口に広がる。温かいものも良いが、暑い季節には冷やして飲むとまた美味しい。



「美味しい……」


「はい。ミハイルさんの育てるハーブはとても質が良いですね。うちのよりも美味しいです」



 アリシアはゆったりとハーブティーを堪能した後、また来ますと言って温室を後にした。


 ……その後、ノアの存在を完全に忘れていたアリシアが、彼女にこっぴどく叱られたのは言うまでもない。


< 29 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop