第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



 結果、その日のうちに、辺りいっぱいに蔓延っていたペパーミントは、ほとんど姿を消した。


 引き抜いたミントを全て干したところで、ミハイルがお茶を運んできた。



「お二人とも、お疲れ様です。本当に助かりました」



 お茶はミントのハーブティーだった。さすがに摘んだばかりのものではなく、保存してあったものを使ったらしい。

 ノアは遠慮していたが、疲労のためかミントの爽やかな香りに抗えず、ティーカップに口を付けた。



「とても美味しいです。さっぱりしていて」


「でしょ?ミハイルさんが淹れるお茶はいつも美味しいの!
ミントは疲労回復効果もあるし、なんだか気分がスッキリするわよね」



 ミントには疲労回復効果の他にも、集中力がアップしたり、リラックスできたりするといった効果もある。



(疲労回復にリラックス、か)



 アリシアはペパーミントの効能を思い出しながら、ふとある人物が頭に浮かんだ。


 膨大な量の執務により、婚約者に会う時間もないほど多忙な男。優秀な人間だとは聞くが、その分疲れが溜まっているのではなかろうか。



「ねえ、ミハイルさん……」



 アリシアは少しばかり迷ったあげく、口を開いた。



「イルヴィス殿下のお茶係は、どこにいるのかしら」



< 41 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop