蘇りのウタ
「でも、逃げたんじゃなかったの?」


「いいや。逃げたふりをしてお前らの様子をうかがってんだ。この女は自分が死ぬことを了承してる。なのに、どうして殺さないんだ」


カケルが乃愛に視線を向けてそう言った。


乃愛は恐怖に顔を歪めながらも、真っ直ぐにカケルを見つめ返している。


「乃愛を殺す事は俺が許さない」


「バカなんじゃないかお前。そんなにこの女が大切か!?」


カケルが唾を飛ばしながら怒鳴り散らす。


「あぁ。大切だ」


俺は躊躇せずに頷いた。


「幸弘……」


乃愛が俺の手を掴んだ。


その目はなにか言いたそうだったけれど、俺は何も聞かなかった。


乃愛の、みんなを守りたいという気持ちはよくわかる。


だけど、乃愛を殺させることだけはできない。
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