蘇りのウタ
創吾が冗談を言っているのではないことは、その表情を見れば理解できた。


「車が動かないなら、歩いて行くしかないのか?」


助手席の和希がそう聞いた。


創吾はお手上げ、というように左右に首を振って見せた。


「嘘でしょ? ここから森を抜けるまでどのくらいの距離があるの?」


真琴が聞く。


森の道へと入ってきてから随分奥まで進んでいるはずだ。


1キロや2キロなんて、生易しい距離じゃないことはみんな理解していた。


「20キロくらい……」


創吾が蚊の鳴くような声で言った。


20キロ。


その距離を聞いた瞬間、みんなが押し黙ってしまった。


その距離を歩ききるころには、きっとまた日が暮れているだろう。


それよりなにより、ここは森の中だ。


野生動物に出くわすこともあるかもしれない。
< 89 / 245 >

この作品をシェア

pagetop