身代わりの姫


部屋のドアを開けると、振り返ったジルがいた。


「どこに………?」


朝の散歩ですわ、と応えて王子の前を通り過ぎた。


「昨日は悪かった、飲み潰れて寝てしまった」


「いえ、そういうこともありますから、お疲れではありませんか?」


ニッコリ微笑むと、ジルが難しい顔をした。


「朝食を頼みましょうか」


「………あぁ。浴室に行くから、先に食べてろ」


部屋を出て行ったジルを見送って、朝食の為のベルを押した。


やつれていくわけにはいかない。

オムレツとサラダを、無理やり押し込んだ。


が、体が騒ぎ出す。食べたくない、と。


トイレで、吐いた。









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