身代わりの姫
「建物をどうするか、町の人達で考えて決めていくのよ。お金とか物資は町の代表の人が国と交渉してるみたいね。
私達は瓦礫を運んだり、昼食を作る係とか、手が足りない所へ毎日手伝いに入ることになるわ。
サリ、無理をしなくていいのよ?
あ、エド?」
歩いて建物が壊されている工事現場の方に向かいながらデジが話すうちに、友達がいたようで呼びかけていた。
「デジ、おはよう」
「おはよう、こちらはサリよ?工事現場のお手伝いなの。
サリ、エドよ」
逞しい日焼けした体つきに、茶色の髪をなびかせて笑顔が爽やかな青年をみた。
「よろしくな、サリ。
とりあえず建てる前に片付けで数日かかるだろうな。
みんな家の中の物を取り出せるだけ取り出していたからな」
3人で歩いて港の方へ行くと船の修繕を始めている人がいた。
「まだ家を建てる前だからな。船着き場の建物の片付けから始めるか。
あ、ジョー?おはよう、デジとサリだ。手伝いに来るらしいよ」
エドが少し先にいた男性に声をかけると、ジョーと呼ばれた男性が振り返った。
「へぇ~、おはよう。サリはこのために来たの?」
エドと同じく日に焼けている顔を私に向けた。
「いえ、ちょっと迷子で教会に居候です」
苦笑いで言うと、アハハ、と3人が笑いだした。
「迷子か。ここなら迷わないでいられるよ。
面白いな、サリって」
どんなふうに受け取ったか分からない。
でも、きっと、道に迷ったのではなく、人生の迷子、と思われたかもしれなかった。