身代わりの姫


軽く昼食を食べると、今まで使っていた部屋をもう一度見ていた。


「サリ、忘れ物はないですか?」

声をかけられて振り返るとコラがいた。


「ええ。お世話になりました」


「いえ、あなたのことをいつも祈っています。
元気で、頑張るのですよ」


頷いた私を、そろそろ時間ですよ、とドアを、開けようとした。


「コラ、待って………これを、教会に………」


厚い封筒を渡した。


「ありがとう、お手紙かしら?」


いえ………と口ごもると、コラが封をしてない封筒を開いた。


「まあ……」


「教会に寄付ですわ、この町の為に使ってください」


ジルベールがカバンに入れてくれていたお金のほとんどを寄付した。



「ありがとう」


コラが頭を下げてから、行きましょう、とドアの方へ向かった。



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