孤高なＣＥＯの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「秘書の仕事も簡単に辞められるようなものじゃないんだよ。やることたくさんあるし、後任だってそうそう見つからないんだから」


　取り繕う言い訳に、心の中で笑いを零す。

　私の代わりくらい、いくらでもいるのに。

　気丈に振る舞ってみせるけれど、大和は私を問い詰めてくる。


「あいつか？　あいつのそばにいるから帰って来られないのか？
　あの社長、本当にお前のなんなんだよ。大企業の社長が、たかだか秘書のためにああやって荷物持ったり、馴れ馴れしく名前で呼んだりするのか？」


　大和はどうやら私が車から降りるところを見ていたらしい。

　そして、“たかだか秘書”を名前呼びする社長が、不思議でしかたないようだ。


　私だって最初は戸惑った。今もまだ慣れずに、ドキドキさせられている。

　けれど、彼のこれまでの環境を考えれば、そういう姿勢はごく自然なものなのだと理解できる。

　彼の女尊男卑の精神は、どの女性に対しても向けられるものだ。

　私だけじゃない、とあらためてそう思うと、また胸の端っこがヒリついた。
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