冷徹社長の容赦ないご愛執
 さっきのカップルが唯一のお客さんだったのだろう。

 展望室の中は、社長と私のふたりだけだ。


「天然の水族館だな」


 丸い窓の外を覗き込んで感心する社長。

 見上げた横顔は海面からの日差しを受け、瞳にきらきらとしたきらめきを宿している。

 泳ぎ回る魚を目で追う社長の楽しそうな横顔に、私の胸はきゅんきゅんとした音を立てて少し息苦しい。

 せっかく海の中を覗けるところに来たのに、私の視線はまたしても整った顔立ちに釘づけになる。

 ふとこちらを見下ろしてくる社長は、空いているほうの手で私をぐっと抱き寄せた。


「どこ見てるんだ」


 誰もいない狭い部屋で、低く呟いた社長の声が響く。

 社長を見ていました、だなんて言わなくてもバレていることに今さらな恥ずかしさを感じる。

 顔を背けた私を覗き込み、社長は二度目になる口づけで私の唇を拾った。




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