冷徹社長の容赦ないご愛執
 そこで、ようやく手を打ってきた米本社。

 EMUAScompanyの東京本社となった我が社の現社長は、海の向こうからやって来る新しい人材と交替させられることになった。

 いったいどんな金髪アメリカンが新社長に納まるのか、期待と不安が社内を渦巻いた。

 が、名前を挙げられたのは、米本社で経営戦略室長をしていた、Mr.Yusei Tachibana.

 ――橘 勇征(タチバナユウセイ)

 れっきとした日本人だった。


 私は通訳として、ウェブ会議で何度もお目にかかったことがある。

 モニターの向こうの若き青年は、初対面であれば誰しもがうっとりと見惚れてしまうであろう眉目秀麗なお顔立ち。

 爽やかさあふれる黒の短髪はスタイリッシュに撫でつけられ、力強い目元は世の全てを統治できるのではないかと思うほど。

 スーツを着るために生まれてきたようなすらりとした立ち姿は、社内報の写真でしか見たことはないけれど、向こうのお国の方々と肩を並べられるほどの長身だ。
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