世界できっと、キミだけが
倉持社長と別れ、宇都木社長はいろいろな人と話を続けている。
私は時々話を振られ、愛想笑い程度を返す。
こんなのでいいんだろうか。
本物の幸子お嬢様ならきっとこういう場でも物おじせず気のきいた返しができるんだろうけれど。
私はへまをしないように差しさわりのない返答をするだけで精いっぱい。
「鹿島。駐車場で待たせている伊永に会社に置いていた書類を届けさせている。それを受け取りに行ってくれ」
「はい。でしたら、誰か代わりの者をよこして…」
「そんな手間をするくらいなら伊永にここまで持ってこさせている。ここのセキュリティは万全のため、招待者として登録されているものしか入れない」
中に入る手続きとかも、厳重だった。
それはそういう危険があるっていうことの裏返しのような気がして、少し怖い。
「急いでいるのだ。さっさとしろ」
「ですが、私は警護を任されている身、離れるわけには」
「お前を雇っているのは私だ。その私が命令しているのだぞ」