世界できっと、キミだけが


「とてもお綺麗なお嬢さんだ。お母様似ですかな?」

「ははは、それはどういう意味でしょう。確かに、コレは母親似です」



にこやかに聞こえるけれど、宇都木社長の心の中はきっと笑っていないんだろうことがひしひしと伝わってくる。
倉持社長は穏やかに笑っているように見えるけれど。
なんだかこの二人、相容れない感じに思える。
正反対というか…。



「今日は、うちのせがれも連れてきているんですよ。お嬢さんとは同じ年で、会ったら仲良くしてやってくださると嬉しいです」

「そうですか。これまでこのような場にお連れになったことはなかったように記憶していますが」

「つい先月成人したもので。まだ大学に通っているのですが、少しずつこういう場に慣れさせておこうと思いましてね」



倉持社長にも息子さんがいるんだ。
私…じゃなくて、幸子お嬢様と同い年。
幸子お嬢様は確か、二十歳だったっけ。

私は宇都木社長の側で、二人の会話をただ聞いていた。
喋ってぼろが出てもいけないしね。



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