世界できっと、キミだけが
「殺されて死ぬのと、病気で死ぬのとじゃ、ここの空気は違う」
「久住さん…」
「竜のお父さんが、護ったから誰も、誰かを恨むことなくこんな葬儀ができてるんだよ」
そんなこと、知ったことかと思う。
俺にとってはなんの関わりのない人で。
「その代わりに、その思いをするのが自分の家族でもよかったってことですか?」
「そうじゃない!そうじゃないよ、竜!」
久住さんは必死に訴えてくれるけど、俺の心には届かない。
やっぱり俺には、父の気持ちも、同じ仕事をしている久住さんの思いもわからない。
「ちょっと、頭冷やして来ます…」
「竜…。あまり遠くに行くなよ。宇都木社長の娘さんの幸子さんもいるから、子どもだからって失礼なことするなよ」
「わかってます…」
これ以上、ギスギスした自分を見られたくなかった。
納得しないといけないことだってことはわかってる。
諦めたのなら最後まであきらめないといけないことも。