世界できっと、キミだけが


比べるまでもないよ。
竜が命をかけるに値しない。


だって、竜のお父さんは幸子お嬢様のお母さんを護って亡くなった。
大社長の奥さま。

それに比べて私は、ただ宇都木幸子お嬢様の皮を借りた一般庶民。
護る価値なんて、一目瞭然だ。




「さっさと終わらせてぇんだ!動くんじゃねぇぞ!」



男が銃を竜に向けて構える。
…いや、ダメ。



竜を死なせたくない。




「やめてっ!」



私はとっさに竜の前に飛び出していた。




「バカ野郎!」




バァン!!とけたたましい銃声と上がる悲鳴。
世界が回る感覚に、濡れる感触。



「…うあ!?なんだ!!放せ!」




一瞬の静寂ののち、一気に騒然とし始める現場。
ハッと目をあけると目の前に私に覆いかぶさる竜の姿。

よかった、私も竜も無事…?


そう思ってハッとした。
竜の右腕から滴る赤い血。




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