世界できっと、キミだけが


それでも。
宇都木と契約を終えた彼女を。
彼女自身にも断られた警護をするわけにはいかないなんて、変な義務感でなにもできずにいた結果だ。



バタバタと足音が近づいてくる。
その足音が誰のか、想像がついた。




「紗千!!」




紗千の父親。
紗千の事を愛してやまない、父親だ。




「小野田さん…、この度は」

「どういう事ですか!もう身代わりなんて終わったって!紗千だってもう大丈夫だって笑って…!」



声をかけた久住さんに父親は掴みかかる勢い。
悲痛な声が、表情が胸に刺さった。



「それに、貴方のところの従業員が犯人だって…!!」

「…申し訳ございませんでした!」




俺は深く頭を下げた。
謝ったところで取り返しはつかない。

父親の、俺たちへの不信感は簡単に拭えない。



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