世界できっと、キミだけが
「…ゃ…て…やめて…」
俺たちはいっせいに紗千の方へ向いた。
紗千は、魘されている様子で小さくささやきながら苦しそうに悶えている。
「紗千!おい、紗千!!」
「紗千さん…!」
紗千の瞳が、ゆっくりと開かれていく。
焦点の定まらならない瞳でゆっくりと瞬きをして。
「紗千…!わかるか?お父さんだぞ!紗千!」
「…おと…さ…。おとぉさん…っ、お父さんっ!」
ゆっくりと覚醒していった紗千は、ワッとスイッチが入るように泣き出した。
父親に抱きつき縋り付いて泣く。
どれだけの恐怖だったのかが伝わってくる。
その姿を見るだけで、胸が苦しくなる。
「紗千…。怖かったな…。痛かったな…。ごめんな…」
「ううっ…、お父さん…っ」
紗千は、しばらく泣き続けていた。