自意識過剰じゃないですか?
何を言っているのでしょうか?
「心乃枝さんて、俺の事好きでしょう」

「・・・・。」

今、なんだか聞き捨てならない事をぶちかまされた相手は私、心乃枝 幸(このえ さい)28歳。

そして、今目の前でそんな自意識過剰発言をかましたこの人は、金城 啓吾(かねしろ けいご)30歳、金城電機株式会社の御曹司でこの会社の専務をしている。

電機と言っても街の電気屋さんでは無く、メーカーの方。

家電製品に特化したメーカーで、今は異業種の美容サプリなども手広く手がけている大きな会社の専務。

私は二年前、運良くそんな大きな会社に中途採用で入社できて、今総務部で仕事をしている。

この専務は、見た目はかなりインパクトが有る。

少しクセのある黒髪を横に流してまとめ、顔は切れ長の涼しげな目元に、凛々しい眉、通った鼻筋に丁度よい大きさの鼻、唇も形良く、男性的な厚さで、身長も高く、手足も長い。

本当はモデルか俳優でもやっていたほうがいいんじゃないかしらと言うような姿形をしている。

そして噂では仕事も凄くすご~く出来るらしい。

そんな雲の上にいるような人と平社員の私がなぜ話をしているのかというと、簡単な理由、専務の部屋の間接照明の電気が切れたという連絡を請けて、総務課の私が付け替えに来たというだけの事なんだけど…。

電球を交換している間、何だか痛いほど視線を感じるな〜。

なんて思いながらも黙って作業していたら、突然冒頭の言葉をいわれたもんだから、頭が真っ白になったと言いますか、良き返しが思いつかず、愛想笑いをニヘラとかます私がそこに居たりするのですよ。

多分なんとも言えない珍妙な表情でヘラヘラしているだろう私を、革張りのゆったりとしたリクライニングチェアに悠然と座っている専務が不敵な笑みを浮かべて見上げている。

な、何だろう…。

さっきの言葉の返事を待っているのかしら…。

冗談なのか本気なのか…?

本気で言ってたら自意識過剰なイタイ人だと思う。

でも自分のスペックをわかってるからこそ言える言葉だったり?

いやいや、からかわれているだけだよね。
そうしたらここは冗談で返すべきか?

でも、冗談で返すには間が空きすぎてしまったような…。

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