自意識過剰じゃないですか?
「沈黙は肯定と思ってもいいのかな?」

専務が勝ち誇ったような笑みを浮かべてそんな事をいったものだから、私は咄嗟にとぼけることに決めた。

「あ、申し訳ございません。先程仰ったお話が良く聞き取れなかったもので…。」

「どういったご用件でしたでしょうか?」

専務の涼しげな目元が微かに眇められるのを私は見逃さなかった。

こ、怖いよ〜。

美しい顔立ちの人は目線だけで人を恐怖に落とす事を私は初めて知りましたよ。

そうこうしている内に電球の交換も終わり、私はおいとまを告げ一礼をしてドアに手を掛けた。

「心乃枝さん、もう一度言うけど、俺の事好きでしょう」

再度投げかけられた言葉に、私は目を見開いた。

また言うか〜!?

心臓がドッドッドッと、容赦なく血液を体中に送り始める。

私は動揺を悟られないように、表情を作り、ドアを開けながら専務の方に向き直った。

「もちろん、金城専務の事は尊敬しておりますし、好意を抱いております。この会社従業員皆が専務の事を素敵な方だと申しております。では、失礼いたします。」

カチャリ…。

私はドアを閉めると足音を立てない様に、なおかつ走るようにその場を離れた。
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