自意識過剰じゃないですか?
 
〜〜〜〜


彼女を見ると震える。

彼女に再会出来た偶然を俺は奇跡だと感じた。

彼女を見ると、興奮と歓喜で心が震えて仕事どころではなくなってしまう。

身体が言うことを聞かなくなり、視線が彼女に集中してしまう。

今彼女は俺の執務室にいる。

こんな事が起こるなんて、思いもしなかった。

後で一本に結んだ黒髪が彼女の肩甲骨辺りまで真っ直ぐに落ちている。

後ろ姿から目が離せない。

チラチラと見える白いうなじと顎のラインが美しい。

背筋がピンと伸び、スキを感じさせないその立ち姿は昔と全く変わりなかった。

二年前、彼女がこの会社に就職したのは知っていた。

だが、この広い会社では立場が違いすぎて、会うことも、姿を見つける事もままならない。

この二年の間見かける事ができたのは数える位しかなかった。

ムクムクと諦めていた欲望が大きくなる。

俺の存在を彼女の中に焼き付けたい。

今、彼女の中の俺の存在など、無いに等しい。

もちろん俺の事は認識はしているはずだ。

だが、昔から今まで彼女にとっての俺はただの会社の上司、風景に過ぎない存在だということに変わりはない。

そんな事は痛いほど知っている。

だからあえて非常識な言葉を投げかけてみた。

それで変な目で見られても、多少嫌われても、まずは彼女の中に自分の存在を刻み込まなければ関係は生まれない。

そう思ったからだ。

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