上司な彼とルームシェア
仲間の旅立ち
夕食を食べて二人で家に帰ると、皆がリビングで集合していた。

「ただいま。皆さん珍しくお揃いで。」と俊哉が言うと、幾太が少し沈んだ顔で、

「かなえさんが、ここ出ちゃうんだって。」
「「え?なんでっ?」」
と由紀恵と俊哉が同時に口にした。
すると、かなえさんが口を開いた。

「実は、実家に帰ることになって。実家は旅館なんだけどね、見合いして女将修行しろって。母も体力的にキツくなってきたみたいでね」

「見合いって…」と由紀恵が眉を下げ言うと、

「まぁ、経営も思わしくなくて。買収されたとこの息子とね、政略結婚みたいなものかな?私も特に相手も居ないし、この歳で拾って貰えるっていうならいいかなと思って。だから由紀恵ちゃん、そんな顔しないで?私も納得して決めた事だからさ。」

「そ、うなんですね……」

すると勇気がスマホをこちらへ向けながら、

「どんなオッサンかと思ったら超イケメンでさぁ!」

見るとかなえの実家を買収した会社のホームページらしく顔写真の取締役専務と書かれてあった。

「うわぁ、めっちゃイケメン!」と由紀恵が目を輝かすと、真波も「でしょ、でしょ!」と同じスマホを覗きこんできた。

すると、「ふんっ」と鼻息を鳴らして俊哉が自室へと入っていってしまった。

「あ~もう由紀恵さん、トシさん拗ねちゃったじゃん」と幾太。するとかなえさんは「あんなのでこの先、手に負えるの?由紀恵ちゃん」という。

その質問に由紀恵は「ははは。」と苦笑いを浮かべるが、俊哉のああいう所も何だか可愛いなと思っていた。



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