上司な彼とルームシェア
逆ハーレム
「えっ、転勤?」
「そう、しかもシンガポール」

ここは、真波の部屋。由紀恵は話があると部屋に呼ばれ、缶チューハイで乾杯した直後の事だった。

「で、真波はどうするの?」
「さすがに今回は一緒に来てくれって言われて…」

「一緒に行くのね?」
「うん。半年以上も待ったかけてたし、さすがに海外との遠距離は耐えられないと思うし」

「転勤はいつ?」
「再来月には移動だって」

「…そっか、おめでとう。寂しいけど、嬉しいよ」
「うん、ありがとう」

「幸せになんなよ!」
「もちろんよ!由紀恵もね」

「うっ、まぁまだ先の話だとは思うけど…努力するわ」


この夜は二人で笑い泣きしながら、遅くまで飲んだのだった。


──そして、今日は真波の結婚式。
あれから急ピッチで式の準備をしていた真波は殆ど家で会うことは出来なくて、久々に顔を合わす。

こじんまりした式ではあったが、純白のドレスを身に纏う真波の世界一幸せな姿に思わず涙がこぼれた。

披露宴にまでは手がまわらず、旦那さんの実家で内輪だけの宴会をするらしく、私達シェアメイト4人は式場を後にした。


「いい式だったね」
「そうっすね。由紀恵さんのも楽しみにしてますよ?」

と幾太が言う。その後ろで勇気が

「トシさん、まだプロポーズしてないんすか?」
「まぁ、まだ早いかな…」

という会話は由紀恵達には聞こえていない。

「まだ、チャンスありますかね?」

という幾太を見上げると

「…俺にも」

と何時になく真剣な瞳が由紀恵を捕らえていた。

「憧れるよね、結婚式は男の人でも」

由紀恵の反応に深く長い溜め息をつく幾太だった。
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