常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「……総務に取りに行けばいいのか?」
不意に声がした。
……山田、気が利くじゃん!やればできる子じゃーんっ。
「あ、お願いできます?助かりま……」
「す」と言ったところで、顔を上げた川中は固まった。
なぜなら……声の主が上條課長だったからだ。
「いやっ、あのっ、課長!いいです!わたし行きますからっ」
川中の声虚しく、課長は去ったあとだった。
仕事が早い、と誉れ高き男なのである。