溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


「あったあった。はい、のど飴。気休めかもしれないけど」
「……ありがとうございます。つかこれ、食えます?」

汚いものでも触るようにそれを恐る恐る受け取ると、不審そうな目を向けた真壁くん。失礼な、と思ったが、辺りを見回しハッとした。

デスクの上にはバッグから放り出された歯ブラシや、手帳、シュシュ、紙くず、レシートなどなど。それにいつ買ったかすら忘れた梅の駄菓子まで散乱している。

こんな無法地帯のようなバッグから出て来たものなんて、誰も食べる気なんてしないかもしれない。

「だ、大丈夫だよ……多分」
「西沢さんて、整理整頓できない人なんですねぇ」
「なっ、そんなことないし! たまたまだし!」
「ふぅん。まぁいいや。とりあえずもらっておきます」
「あんまり無理しないでね」
「無理しないと殺されます」

真壁くんはそう言い残すと、飴を乱雑にポケットに入れながらゲホゲホと繰り返しながら席へと戻っていった。

全く生意気なやつだ。年上をなんだと思っている。でもあの背中に少し同情した。リリース前はいつもこんな感じ。病院どころか、休むことさえ許されない。一人でも欠けるとスケジュールが狂うから。

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