溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
そう心の中で突っ込んでいる隙にもさらに距離を詰めてくる。
「どうなんですか? 答えてくださいよ」
「そんなのっ、真壁くんには関係ないでしょ! いいから離れてよ」
「だから嫌ですって」
そう言って真壁はどんどん距離を縮めてくる。
「俺が破ってあげましょうか?」
「はぁ? 何の話よ!」
「そういう話です」
いやいや意味わかんないし。
「俺、西沢さんならいけますよ。何気に顔可愛いし。」
そんなジャッジいらん!次にいたらないことを言ったらその口を塞いでやる!
そう思っていると突然、何を思ったのか真壁くんは入口の方をチラッと見た後、肩に手を回し強引に抱き寄せてきた。
「何すんのよ!」
「シーッ、ちょっとだけこうさせてください」
「ちょっと、調子に乗らないで!」
引き離そうとするが、酔いも回り力がうまく入らない。それに可愛い顔してるけど力はやっぱり男だ。そう意識すると途端に胸がバクバクとしてきた。
「樹。どういうこと?」
真壁くんの腕の中で石像のように硬直していると、予期せぬ声が聞こえてきて、ハッとしながら振り返る。そこにはすごい形相で私たちを見下ろす見知らぬ女の子が立っていた。
……誰?