溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
わけがわからないまましばらくその言い争いを眺めていると、見兼ねた店員さんが彼女を連れ出した。真壁くんはその姿を見て、ふぅ~と、どこか安堵のため息をついた。
「どういうこと」
低い声でそう問えば、真壁くんはへらっと笑って言った。
「いやぁ彼女しつこくてさ。昨日別れ話したのに全然納得してくれないから」
「だから私をだしに使ったってわけ?」
「だしだなんて人聞きの悪い。カモフラージュだよ」
カ、カモフラージュだとー!?
「つーわけで、晴れてフリーになったわけだし、西沢さん。俺と付き合います?」
「はい?」
「とりあえず今は西沢さんのこと好きじゃないですけど、俺いつも女の子と付き合う時は、この子を好きになろうって決めてから付き合うスタイルなんスよー」
いけしゃあしゃあと、よくもまぁそんなこと言えたもんだ。ハリウッドスターにでもなったつもりか!私は遂に堪えていた拳を振りかざした。
「このっ、最低男!!」