ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】
毎日塾に行ったし、休みの日は家庭教師も雇ってもらった。
その甲斐あってメキメキと学力をつけ、小学5年時の最後には学年トップの成績を初めて得た。
両親はたくさん褒めてくれて、それがどんなクリスマスプレゼントより嬉しかったのを今でも憶えている。
努力すれば報われるものだと感動したこの頃、両親にも神様からの贈り物が届いていた。
そういえば、サンタクロースが偶像だと知って絶望したのもこの頃だ。
43歳の母が妊娠。しかも、宝泉家親戚一同待望の男の子。
生まれたときは純粋に喜んだ。
手がすごく小さくて、子羊のように泣く弟がとても可愛くて……。
でも、名前の由来を聞いたとき、初めての「おや?」があった。
賢者のようにあれ、と祖父から命名された父。
その父が、聖者のようにあれ、と弟に【聖矢】と名付けたのだ。
小学3年のとき、目的地に行くためにはまず自分の現在地を知りましょう!と、名前の由来を親に発表してもらうという父親参観があった。
忙しい父に代わって母が、
『私の香澄から一文字、お父さんの賢矢から一文字を取って、彩矢香と名付けました』
そう教壇の上で顔を赤らめ発表。
まだ幼い私は、このふたりの子なんだと改めて理解したけど、よくよく考えたらただの当て字だ。
意味や願いなんて一つも込められていない。
このように、弟の誕生が私の苦悩を産むのであった。