こけしの恋歌~コイウタ~
課長の手が離れていく。
相変わらず心臓はドキドキしっぱなしだけど、切なくて寂しい感覚に襲われた。
課長は受話器をとった。
私はその場から動けず、目線だけは課長を追っていた。
「総務部 成瀬です」
静かな資料室に課長の穏やかな声が響いた。
私の頭の中はまるで魔法でもかけられたかのように、ぼーっとなにも考えられないでいた。
ただ、少し遠くのほうで、課長の穏やかな声がかすかに聞こえているような気がした。
はっきりと意識を取り戻したのは、課長に顔を覗き込まれてからだった。
「うわっ!」
またしても色気のない声が出てしまう。
「こけしちゃん、可愛い。ちゃんと話をしよう。今すぐにでもしたいんだけど、常務に呼ばれてしまって。資料探し、途中で申し訳ないんだけど、こっちはだいたい終わってる。残りを任せても大丈夫かな?」
常務や資料探しという言葉を聞いて、ようやく現実に戻った。
「早く常務のところへ行ってください!資料探しは私ひとりで大丈夫ですから!」
課長が常務に呼び出されるのは珍しいことではない。
もともと常務は課長を気に入っているし、出張に同行することもある。
それでも上役からの呼び出しということに少し心配してしまう。
そんな気持ちが私の表情に表れていたのか、課長は私の頭をポンポンと撫でた。
まるで大丈夫だと安心させるように。
「それじゃ、あとはお願いするね。でもくれぐれも無理はしないで」
課長は上着を着ながら、私に優しい眼差しを向ける。
「はい」
かろうじて一言返事をすると、課長は資料室から出ていった。
相変わらず心臓はドキドキしっぱなしだけど、切なくて寂しい感覚に襲われた。
課長は受話器をとった。
私はその場から動けず、目線だけは課長を追っていた。
「総務部 成瀬です」
静かな資料室に課長の穏やかな声が響いた。
私の頭の中はまるで魔法でもかけられたかのように、ぼーっとなにも考えられないでいた。
ただ、少し遠くのほうで、課長の穏やかな声がかすかに聞こえているような気がした。
はっきりと意識を取り戻したのは、課長に顔を覗き込まれてからだった。
「うわっ!」
またしても色気のない声が出てしまう。
「こけしちゃん、可愛い。ちゃんと話をしよう。今すぐにでもしたいんだけど、常務に呼ばれてしまって。資料探し、途中で申し訳ないんだけど、こっちはだいたい終わってる。残りを任せても大丈夫かな?」
常務や資料探しという言葉を聞いて、ようやく現実に戻った。
「早く常務のところへ行ってください!資料探しは私ひとりで大丈夫ですから!」
課長が常務に呼び出されるのは珍しいことではない。
もともと常務は課長を気に入っているし、出張に同行することもある。
それでも上役からの呼び出しということに少し心配してしまう。
そんな気持ちが私の表情に表れていたのか、課長は私の頭をポンポンと撫でた。
まるで大丈夫だと安心させるように。
「それじゃ、あとはお願いするね。でもくれぐれも無理はしないで」
課長は上着を着ながら、私に優しい眼差しを向ける。
「はい」
かろうじて一言返事をすると、課長は資料室から出ていった。