夢色メイプルシュガー


「なあ芽衣」


真剣な顔した宗谷くんが、私をじっと見て声をかけた。


「ケーキ作ろうって思ったきっかけとか、そういうのある?」

「きっかけ……?」


思わぬ質問に、小さく声が洩れる。

しかし考えるまでもなく、ふわっと一つの記憶が浮かんできた。


そう……忘れられない……。


「あるわ」


私は、自然と笑顔になりながら答える。


「小学校2年生の時。お母さんの誕生日に、驚かせたくて、喜んでもらいたくて……」


初めて作った、フルーツタルト。

あの時は失敗しちゃったけど……。

それでもお母さんはすっごく喜んでくれて、本当に嬉しかった。


「それからどんどん、いろんなケーキを作るようになったかなぁ……」

「それだ!」

「え!?」


話し終えるや否や、宗谷くんがいきなり私の肩を掴んで叫んだ。

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