幸せの静寂
 ある日、真澄たちが突然、私と口をきかなくなった。理由はさっぱり分からないが、可能性があるとするならば私の予想があたったことになる。真澄はずっと周りに自分を合わしていたからとうとう限界が来たのだろう。それに気付いた未稀と碧は、どうしていままで気付かなかったのだろうと思い、真澄に申し訳ない気持ちが生まれるはずだ。そのなると、なんでも真澄の言うことを聞こうとするだろう。でも、これはあくまで自分の予想であるため、碧に詳しい話を聞こうとした。
「あ、碧!一緒に移動教室にいこ~」
「…え、あ…ごめん…」碧はそう言って未稀の所へ走っていってしまった。
「…あ~あ、予想が当たっちゃった…」
 バレーボールは一人でも単独で戦っていたら負ける競技だ。だから、皆で協力してボールを繋いで繋いで得点にする。それなのに、私と真澄たちとの間に亀裂が生じてしまった。こんなことをチームの皆に言えるはずがなく、私と真澄たちは見せかけの信頼関係を築いてしまうこととなった。
 今日は、他校との練習試合の日。見せかけの信頼関係で勝てるわけもなく、私たちは負けてしまった。幸い、まだチームの皆はこの事に気づいていないが、それも時間の問題だ。だから、私は真澄と話をしようと思い、その翌日、クラブの帰りに体育館裏で真澄と話をした。
「真澄、今、真澄が思ってること全部言ってよ。お願い。言って。真澄が大変な時は皆に頼るって約束したじゃん。お願い。」すると、真澄は声を震わせながら言った。
「……じゃん。…冬香なんかに分かるわけないじゃん!優しい家族がいて、勉強もできて、素直で、真っ直ぐで、バレーボールも天才で…そんな冬香に私の気持ちなんて分かるわけないじゃん‼」
「真澄…それは、違…」
「違うくない‼……っもう、私に関わらないで‼」真澄はそう言って、私に背を向けて走っていった。私は、悔しかった。ただ真澄を救いたかっただけなのに、真澄を…泣かせてしまったから。
 それからも私たちの関係は一向によくならず、私たちはとうとう三年生になってしまった。
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