再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
5.黒王子が何やらヒミツを持っているらしい件。
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季節は変わり、空から降り注ぐ太陽の光や熱に負けまいと過ごす日々が続いている。
これからさらに暑さは厳しくなっていく。
企画営業部に異動してから、もうすぐ4ヶ月が経つ。
今日は朝から、案件を取りまとめる作業を進めている。
基本的に私は航くんをはじめ、数人の企画営業のアシスタント作業をするのだけれど、その作業にも慣れてきた頃、企画営業部が携わっている案件の取りまとめ作業を任されるようになった。
取りまとめは月1で行い、2年間ほど務めた後、後輩に引き継いでいく持ち回りの作業らしい。
骨の折れる作業だが、たくさんの案件を確認することができることもあり、最近では楽しみな作業のひとつだ。
午前中は見積書作成や発注作業は入ってこなかったため、たっぷり時間をかけて作業を進めることができた。
昼休みになり、瑠花とふたりで会社から歩いて10分弱のところにあるワンコインランチの店に足を運んだ。
私は豚の塩こうじ焼きの定食、瑠花はチキン南蛮の定食を頼み、箸を進めながらおしゃべりを繰り広げる。
「紗菜美、その後の進展は?」
約2ヶ月前から瑠花の口からよく出てくる“ある話題”に変わった瞬間、私は固く口を閉ざした。
食事に専念しようと黙々と豚を口に運んでいると、瑠花が問い詰めるように「言いなさい」と箸の先を私に向けてきた。
瑠花の問いかけから逃げることができないことはわかっているので、口の中のものを飲み込んだ後、私はしぶしぶ口を開く。
「瑠花、箸で人を差すなんてお行儀悪いよっ。その件に関しては、何も進展しておりません! っていうか、それ一昨日も聞かれたから。平日だし、たったの数日で進展するわけないでしょ」
「まだ何も進展してないの!? まったく、本当に瀬戸さんってば何考えてるの? 付き合い始めてから2ヶ月以上経つのに、キス以上のことをしてないなんて!」
「ちょっと、声大きいから!」
私は人差し指を唇に当て、静かにしてほしいと訴える。
とてもナイーブなことを大声で言わないでほしい。
「だって、今どきの高校生だってもっと早く進展するよ? 大の大人が恋人になってから2ヶ月以上も経ってるのに、初エッチしてないなんて考えられない!」
「……私たちはのんびり愛を育んでるの」
「物心ついたときには一緒に過ごしてたのに?」
「うっ……」
それを言われると元も子もない。