再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
航くんたちの会話が終わり、建築士たちはチャペルの中に入っていく。
それを視界の片隅に映しながら私はオブジェに近づく。
吸い込まれてしまいそうなくらい綺麗なオブジェに見とれて立ち止まってしまうと、航くんが私の横に来た。
ハッと我に返る。
「あっ、瀬戸さん。すみません」
「いや。俺も今日初めて見たけど、これ、いいよな。梶原さんの言葉をヒントに、提案して作ってもらったんだ」
「……私の言葉?」
「そう。アートアクアリウムに行ったときに言ってただろ。結婚式場にあると素敵だって。最初は雰囲気に合わなくなるっていう意見も多くて苦労したけど、いくつもの方法を提案して実現することができた」
アートアクアリウムのことが頭に浮かんだとき、航くんもあの空間にすごく影響されていたしヒントにしたのかもしれない、と思った。
でも、まさか私が妄想で言っただけの言葉をヒントに、このオブジェが実現したなんて……。
想いを実現させることって、こんなに感動的なことなんだ。
「……すごく綺麗です。この雰囲気にもすごく合ってますし、たくさんの人の目に留まる光景が目に浮かびます!」
「そうだな。で、どう? 自分の意見が取り上げられて実現するのって、たまらなく嬉しいだろ」
「はい……! これが、瀬戸さんのお仕事なんですね」
「梶原さんの仕事でもあるだろ。むしろ、これに関しては梶原さんの意見がなければできてなかった。勝手にアイディアとして出すのは悪いとも思ったけどな」
「いえ、悪いだなんてそんなことありません。私のちっぽけな想いを気にしてくれてたなんて……すごく嬉しいです」
航くんは私の想いをちゃんと聞いてくれていて、現実にしてくれた。
嬉しさに涙が出そうだ。
「最初は小さな想いでも、それが響けば想いは大きくなって多くの人に共感されて、いずれ形になることもあるし、人を感動させるものにもなる。もちろん無理なこともたくさんあるけど、だからといって最初からできないなんて諦めることはない。やれることは悔いなくやるべきだと俺は思う。理想論だとバカにされたとしても、想いを現実にしていきたい」
「……はい」
こうやって実現したものを前に言われれば、説得力がぐんと強くなる。
彼は以前、「夢を夢のまま終わらせるのか、夢を現実にするのかは、紗菜次第だろ?」や「依頼者の夢や想いを現実にしていくことが俺たちの仕事だ」と言っていた。
信じていなかったわけではないけれど、その言葉たちがようやく腑に落ちた気がした。
「じゃあ、チャペルに入るか。楽しみにしてただろ」
「はい!」
嬉しさに浸りたい気持ちを抑え、いよいよなのだと心臓を高鳴らせながら、航くんに続いてチャペルの入り口をくぐった。