再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
目の前に広がった光景に私は言葉を失う。
木のぬくもりを感じさせるやわらかな空間を、まるで太陽の光のようなあたたかな照明が映し出す。
設計図を見たときもすごく素敵だと思ったけれど、実物は想像を越えている。
空間の素晴らしさに感動して見とれていると、航くんと藤岡さんは他のスタッフと話しながらライティングの調整を始めた。
邪魔にならない場所でメモを取っておこうと慌てて彼らの元に行こうとしたとき、会場スタッフらしき女性に声をかけられた。
「こんにちは。瀬戸さんのお連れの方ですか?」
「あっ、はい。こんにちは、梶原と申します。瀬戸と藤岡がお世話になっております」
「いえ。こちらこそ、こんなに素晴らしいチャペルにしていただいて感謝しています。申し遅れましたが、私、白木(しろき)と申します。よろしくお願いいたします」
白木さんは丁寧にお辞儀をしてくれて、私も「よろしくお願いいたします」と同じように頭を下げる。
「これからの流れに関してご相談させていただきたく、声をおかけしました」
やわらかな口調の中にしっかり仕事の話が入り込んできて、私は焦った。
すぐに口を開く。
「あの、申し訳ありません。作業の流れに関しては私は決めかねますので、まずは内容をお聞きしても構いませんか? すぐに瀬戸に確認して参りますので……」
航くんのアシスタントとして来ているのだからこういう状況になることは予想できたはずなのに、流れまでは確認していなかった。
確認していればスムーズに作業が進んだかもしれないのにと後悔しながらメモの用意をしたとき、背後から声が飛んできた。
「白木さん、どうかされましたか?」
「あぁ、瀬戸さん。いえ、梶原さんにお願いしたいことがありまして。藤岡さんにお願いする予定のことなんですが……ぜひ、梶原さんと瀬戸さんにもお願いしたいんです」
「梶原と私に、ですか。内容をお聞きしてもいいですか?」
航くんも聞いていなかったのか少し困惑した様子で、白木さんに耳を傾ける。
段取りには私は入っていないはずなのに、何の依頼をされるというのだろうか。