再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~

04

 
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航くんと再会してから1週間しか経っていないのに、ここ何年も大きく動くことのなかった感情が動いているような気がする。

昨日は夕飯を食べてお風呂にゆっくりつかった後、テレビを見る気分にはなれず、早めにベッドに入った。

でもなかなか寝つけず、昨日の出来事を思い返しているうちにいつの間にか眠りに落ちていた。

朝を迎え、光を求めるようにベランダの方に視線を動かすと、晴れている日にはカーテンの隙間から部屋に入り込んでくる太陽の光がなく薄暗く感じた。

今日は天気がよくないのかなと思えば気分も上がらず、身体を動かすのも億劫で、私はベッドの上で寝返りを打つ。

身体の力を抜いて目を閉じると、昨日のことが鮮明に頭に浮かんできた。

……やっぱり、現実、だよね……。

航くんとのキスは綺麗な夕日と海が見せた夢だったんじゃないかと思いながら唇を触ってみるけれど、記憶に残っている感触はやっぱり本物だ。

キスの前に言われた「本気だ」とか「一緒に一歩進めばいい」とかいった言葉はどういう意味だったのかな……。

単純に捉えてしまえば、まるで航くんが私のことを好きだと思っているように思える。

……あの航くんが私を好き……? いやいやいや、それはない。

昨日は思わぬ言葉があったものの、航くんは昔と変わらず強引だし、やっぱり私の話に興味がなさそうにしたり意地悪なことを言ってきたりするのだ。

再会してから1週間で私を好きになる理由もわからないし、好きならもっと優しくしてくれるはず。

いつも通り、私をからかったと考えるほうが納得できる。

きっと雰囲気にあわせて言ったリップサービスだ。

そう思うのに、キスされたときのシチュエーションが頭にこびりついて離れてくれない。

相手は翼くんじゃないのに、どうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう……。

翼くんと顔が似てるから混乱してる?

そういう結論に落ち着かせようとしても、頭に浮かぶのは翼くんではなく、再会してから意外な一面を見せてくる航くんのことばかりだ。


「なんなの、もう……。キスされて意識しちゃうなんて、私、子どもみたい……。~~あーっ、もうっ!」


私はもどかしい気持ちを放出させるように両足をばたつかせる。

そして枕に拳を叩きつけ、その反動で身体を起こした。


「考えるのやめた!」


このまま考えていても無限ループに陥るだけだ。

昨日できなかった部屋の掃除と洗濯をして、気を紛らせよう。

あまり気は乗らないけれど、外に買い物に行くのも気晴らしになるだろう。

私は「よしっ!」と気合いを入れて、ベッドから抜け出した。
 
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