再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 


月曜日。溢れんばかりの気合いを入れて、私は仕事に向かった。

でも私の気合いに反して、今日も生憎のくもり空だ。

結局、昨日は1日中、航くんにキスされたときの光景や彼の表情が頭の中を回りっぱなしで、航くんのことばかりを考えていた。

でも、今日からはそうはいかない。

オフィスではきちんと仕事をしなければいけないし、変に意識したり戸惑ったりしたら航くんにからかわれるのは目に見えている。

そうなるのはやっぱり悔しいし、何も考えないのが一番いい。

私が何も気にしなければ、きっと前と同じようにいられるはずだ。


私がオフィスに到着したとき、航くんはすでに出社していて、部長のデスクの前で部長と彼の同僚と一緒に笑顔で談話をしていた。

その光景を横目で見ながらデスクに向かっていると、「梶原さん、おはよう」という声が耳に飛び込んできた。

驚いてしまって「あっ、おはようございます!」と大きな声で返事してしまうと、周りの人たちから「朝から元気だね~」と笑われてしまった。

……いけない。無意識に航くんのことを気にしてしまっている。

気にしない、気にしない、と自分に何度も言い聞かせながら航くんから視線を外し、私は自分のデスクに向かった。

始業まで時間があったので、コーヒーを注ぎにオフィスの入り口近くにあるカフェサーバーに向かう。

経理部にいた頃から使っているお気に入りのカップにコーヒーを注ぎ、コーヒーの香ばしい香りに癒されながらミルクを手に取ろうとしたとき、背後から声が飛んできた。


「おはよう。梶原さん」

「ひゃっ! あっ、おはようございます。川崎(かわさき)さん」

「そんな、お化けが現れた!みたいな反応しないでほしいな」

「す、すみません。ちょっとボーッとしてて」

「いや、いいけどね」


可笑しそうに笑っても表情が崩れないイケメン様は、瑠花の旦那様であり、企画営業部のエースだ。

川崎さんは仕事中はクールで、普通であればこうやって気軽に話せる存在ではない。

でも、私が瑠花の同期ということもあり、他の人に比べフレンドリーに接してくれるのだ。
 
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