恋ってなんですか?
噂の赤羽君
「うがっ!さむ〜」

友達の音原芽衣(おとはらめい)が、灰色のダッフルコートを羽織りながら言った。私たち2人が所属しているのは茶道部。4月から部活が始まっているが、まだまだ寒い。
昇降近くの自動販売機でココアを購入し、手の上で転がしていると、じんわりと温かさが伝わってくる。しばらくそれを味わってからキャップを開け中身を一口飲むと、ココアの甘さや温かさが体の中へ染み渡っていく。

「ふぅ〜生きる気力を取り戻した」
「いくらなんでも大袈裟過ぎるでしょ」

笑いながら靴を履き替え、外に出る。

「あ、そうだ」

芽衣が、唐突に声を上げた。

「何?」
「真由、赤羽悠里君って知ってる?」

赤羽悠里?そう言えば、浜田さん達の話に登場していたような。

「・・・恋バナ?」
「違う違う、これはね、真由にも関係することなんだよ」

私に関係?どういうこと?
私は昼休みに、浜田さん達2人の話を聞いて初めてその存在を知ったっていうのに?

「実はさぁ・・・あ」

芽衣が、言葉を切り、校庭の向こうに手を振った。芽衣の視線の先には1人の男子生徒が・・・。

「赤羽君、丁度良かった」

芽衣が嬉しそうに言う。この人が赤羽君か。

「音原さん、黒川さんに話してくれた?」
「いや、まだ。今、丁度話そうと思ってたところだよ」
「一体何の話なの?」

私が訊くと、2人は顔を見合わせてため息をついた。

「あのね、真由。最近、赤羽君の靴箱の中に、大量のラブレターが入ってるんだって。それも、差出人は全部同じ。不気味だから読んでないんだよね?」
「うん。で、その差出人の名前が・・・<黒川真由>」

黒川真由・・・って!それ、私じゃないの!

「なんでなんで!私はラブレターなんか出してないっ」
「知ってるよ、知ってる。黒川さんはそういうのに興味がなくてドライでクールなのは学年でも学校全体でも有名だから」

え・・・マジで。
そんなこと、今まで知らなかった・・・。

「俺さ、いくら自分が恥ずかしいからって、他人の名前でラブレター書くなんて許せない。本気で犯人探して、黒川さんに謝らせる」

気持ちは嬉しいけどさ・・・正義感強過ぎかっコイツ!
まあ、私も犯人見つけたいけどね・・・。

「だから、2人とも協力して!犯人探し!」
「・・・ええええええ〜〜!!!」

見事にハモった。
な、なんでそうなるの?正義感強いのは分かったしさあ、私も許せないけどさあ、なんで初対面の相手と犯人探ししなくちゃならない訳よ!?

「いやいや、私はいいよ、犯人なんか探してもらわなくても!」
「駄目。俺のプライドが許さない。黒川さん、クラスにいない?そういうことしそうな女子」

プライドって言われちゃうとなぁ・・・。仕方ない、考えてみるか。
井田有希(いだゆうき)。
ボーイッシュでさっぱりした性格だから、そんなことはきっとしない。
大川唯(おおかわゆい)。
意外にミーハーだけど、仲がいいから、私に恥をかかせるようなことはしないだろう。
加藤きらら(かとうきらら)。
可能性あるかも。でも、私とはなんの接点もないからな・・・。

という感じで、クラスの女子を一人一人思い浮かべてみたけど、それっぽい人は1人も。

「・・・無理、いない」
「そっか・・・じゃあ、黒川さんのクラスじゃないかもな。こうなったら臨時探偵団結成だな」

はぁ?
なに、探偵団って。漫画じゃあるまいし・・・。

「おお、いいね!探偵団!」

芽衣も乗り気かよ・・・二対一。
私の負けか。

「・・・分かった。いいよ、臨時探偵団結成」
「よし、じゃあ、明日から捜査開始ってことで!今日は解散!じゃあね!」

赤羽君は行ってしまった。
仕方ない。やるか・・・探偵。
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