【完】せんぱい、いただきます。

7時過ぎに先輩は私のアパートの下に来た。



マフラーと手袋をつけ、部屋に鍵をかけ

先輩に声をかける。




「あけましておめでとうございます」



「ん、あけおめ。」



先輩は、ひとことあいさつをして、

歩き出した。



私もいつものように後ろをついて歩く。




冬の空は澄んでいて、星がよく見える。



全然星には詳しくないから、上を見上げても

オリオン座しか見つけられない。



時折優しく吹く冬の風は私の頬をかすめる。



先輩はベージュ系の綿パンに

紺のダッフルコートを着て同じような色の

ネックウォーマーをしている。



「先輩、寒くないんですか?」



ふと、何もつけていない手。



もともと色が透けるように白い手が

さらに白く浮かんで見えた。



「いや、普通に寒いよ」



言葉と一緒に白い息が吐き出される。



そして、自分のコートのポケットに

手を突っ込んだ。

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