嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
次の日。
コピー機に紙を補充し終えると、思わずお腹に手を当てた。
またこの痛みだ。
毎月やってくるこの痛みは、もう何年の付き合いだろう。
軽い日もあれば、薬に頼らないといけないほど辛い日もある。
だから痛み止めの薬は、常にバッグの中に入れていた。

「桜井、なにやってるんだ。体調でも悪いのか?」

不意に背後から声をかけられ、肩が跳ねる。
振り返ると、新庄くんが心配そうな顔でこちらを見ていた。

「ううん、大丈夫。体調は悪くないよ」

慌てて首を横に振る。
体調が悪いといえば悪いけど、生理痛だなんてさすがに男性には言いづらい。
幸い、今日は薬を飲むほどの痛みではない。
余計な心配はかけたくなくて、曖昧に笑って誤魔化した。

「ふぅん、ならいいけど。それより今日の飲み会は行けるんだろ?」

あ、そういえばそうだった。
今日は会社の飲み会の日だ。
しかも今回は、女子社員の会費は社長が負担してくれることになっている。
無料で参加できるなら、行かない理由はない。

男性社員たちは『女性陣だけ贔屓だ』と冗談交じりに文句を言っていたけど、社長は『お前たちとは普段から飯に行ったら奢ってるだろ』と笑って一蹴していた。

社長は豪快で太っ腹な人だ。
うちは男性中心の会社だからか、社長は女性社員には少し甘い気がする。

とはいえ、男性社員が社長に向かって『贔屓だ』なんて言っても、笑って許される関係性も凄いと思う。

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