嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「こういうこと」
囁くように言うと、再び唇が重なった。
さっきの触れるだけのものとは違う深い口づけに、体が熱を帯びていく。
やがて唇が離れると、新庄くんは愛おしそうに私を見つめ、優しく頬を撫でてきた。
「可愛い。こんな表情、誰にも見せたくない」
彼の指先の感触に、また胸が高鳴った。
一体、私はどんな顔をしてるんだろう。
間違いなく、真っ赤な顔をしてるはずだ。
恥ずかしくて俯こうとした瞬間、新庄くんが立ち上がり、私の手を取った。
そのまま引き寄せられ、体がふわりと宙に浮く。
「わっ、ちょっと!」
突然のことに慌てる私をよそに、新庄くんはクスッと笑う。
「暴れるなって」
「だって……」
「危ないからじっとして」
新庄くんはそう言うと、私を抱きかかえて歩き出す。
そのまま寝室へ向かい、ベッドの上へそっと降ろされた。
「今日は……帰すつもりないけど、いい?」
耳元で囁かれ、甘い緊張感に心臓が大きく跳ねる。
新庄くんは私を愛おしそうに見つめると、もう一度唇を重ねてきた。
温かくて優しいキスに泣きそうになる。
叶わない恋だと思っていた。
彼女がいると思い込み、自分の気持ちに嘘をつき、何度も諦めようとした。
――だけど。
ずっと好きだった人と想いが通じ合い、まるで夢でも見ているみたいだ。
胸の奥から溢れ出す愛しさを抑えきれず、私は新庄くんのシャツをキュッと掴む。
「新庄くん、好き……」
小さな声で呟くと、新庄くんは嬉しそうに目を細めた。
「俺も好きだよ」
彼の言葉が、胸の奥に沁み込んでいく。
新庄くんの温もりを感じながら、私は幸せを噛みしめるように目を閉じた。
END.


