嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~

「その奥さんとも仲がよくて、三人でご飯食べたこともあるし」

「マジか……」

私の言葉を聞いた瞬間、新庄くんは脱力したように大きなため息をついた。
そして、照れくさそうに自分の顔を両手で覆う。

「なんだよ、それ……。焦って損した」

そんなことを言う新庄くんの顔は、耳まで赤くなっている。
もしかして、伊織くんと一緒のところを見て、告白しようと思ってくれたんだろうか。
そう思ったら、胸の奥がくすぐったくなった。

「本当はさ、会社で桜井は俺の彼女だって言いたいけどな」

「えっ」

思わず目を見開いた。
驚いて固まっている私を見て、新庄くんが少しだけ困ったように笑う。

「でも、さすがに今は町田さんのこともあるし、周りに言わない方がいいか」

「うん」

それはそうだろう。
町田さんの告白を断ったばかりなのに、その直後に『新庄くんと付き合いました』なんて言うのは、さすがに気まずい。

「あと、マジで太田さんの紹介の話だけは、どうにか断れよ」

「う、うん。頑張る」

真剣な表情で言われ、思わず苦笑いする。
太田さんの押しの強さは手強いから、どうにかスルーできたらいいんだけど。

「あー。マジで桜井は俺の彼女だって言いふらしたいわ」

不満そうにつぶやく新庄くん。
まさか、彼がそんなことを言うとは思わなかった。
隠しきれない独占欲が垣間見え、頬が緩んでしまう。

「もっと桜井に触れてもいい?」

低く、艶やかな声が鼓膜を揺らす。
今までに見たこともないような、熱を孕んだ瞳と視線がぶつかった。

「それってどういう……」

聞き返した声は、驚くほど小さかった。
新庄くんが、ゆっくりと距離を詰めてくる。
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