嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「なんだい、お節介って。あたしの知り合いの息子なんだけどね、年齢は三十歳で商社勤めの真面目な子らしいんだよ。それでね、いいお嬢さんはいないかって相談されてたから、ちょうどいいじゃない」

いやいや、ちょうどいいわけがない。
完全にお節介だし、薦めてもらっても困る。
言いづらいけど、やんわりと断ろう。

「ありがとうございます。でも、今はまだそういうのは考えられないので……」

「そんなこと言わずに、会うだけ会ってみなよ。セッティングするから。ちょっと待っててね」

「えっ、ちょっ……」

戸惑っている私を無視して、太田さんはスマホを取り出して電話をかけ始めた。
太田さんは一体、なにをしているの?

突然のことに呆然としてる私に、北見さんが苦笑いしながら、タルタルソースがたっぷりかかった唐揚げを差し出した。

「こうなったら太田さんは手がつけれないよ。しかも酔っているから、いつも以上に突っ走るし」

北見さんは太田さんを横目で見ながら、肩をすくめた。

「取りあえず、気の済むようにやらせとくしかないよ」

「面倒なことになる予感しかしないんですけど」

「大丈夫よ。本当に紹介ってことになったら、私がうまく助け舟を出してあげるから」

「お願いしますね」

縋るような気持ちで言い、唐揚げを口に運んだ。

「えっ、新庄って結婚すんのか?」

突然、耳に飛び込んできた大声にびくりと肩が跳ねる。
しかも、驚いた拍子に唐揚げではなく内頬を噛んでしまい、鋭い痛みが走った。

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