嘘をつく唇に優しいキスを
いつになるか分からないと言っていたけど、新庄くんは結婚するんだから期待してはいけない。
いつまでも立ち止まっている訳にはいかないんだと改めて気付かされた。
飲み会の席で新庄くんの彼女の話を聞くたびに耳を塞ぎたくなった。
勝手に嫉妬して落ち込んで、報われない想いをひた隠しにしていた。
それも今日で終わりにしなきゃ。
私は、片想いに終止符をつけようと思い切って口を開いた。
「新庄くん、結婚するんだってね」
わざと明るい声で話しかけると新庄くんの身体がピクリと反応した。
そして、突き放すように一言。
「桜井には関係ないだろ」
「あ……、」
その言葉を聞いて一気に心が冷えていく。
新庄くんの表情からも、その話題には触れるなと拒絶しているように感じた。
関係ない……、確かにそうだけどハッキリ言われると辛いな。
余計なことを言わなければよかった。
後悔ばかりが募る。
「そ、そうだよね。ごめん、余計なこと言って」
どうにかその場を取り繕うとして謝った。
「いや、俺も言い方が悪くてごめん……」
気まずい雰囲気に包まれ、お互いに黙り込んでしまった。
その後も話すことなくボンヤリと窓の外を眺めていると、お酒を飲んだ影響なのか眠気に襲われる。
こんなところで寝てしまう訳にはいかず、なんとか睡魔に抗おうとした。