嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「もう、太田さんはすぐに先走るんだから。先にちゃんと確認しておかないと駄目ですよ。次からは気を付けてくださいね」

「本当にそうだね。麻里奈ちゃん、ごめんよ」

太田さんは、申し訳なさそうに頭を下げた。
私のことを思ってのことだったのかもしれないけど、正直ありがた迷惑だ。
これに懲りて、しばらくはおとなしくしてくれるといいけど。

「太田さんの見切り発車は危険だよね。勢いがすごいし、強引に押し切ってくるから」

北見さんが声をひそめて、耳打ちしてくる。

「本当にそうですよね。言われたときはどうしたらいいのか分からなくて、泣きそうになりましたよ」

「あはは。実際、ほっぺを噛んで泣いてたし」

北見さんはそう言ってクスクス笑う。

「それは言わないでくださいよ」

「毎度のことながら太田さんは思いつきで動いているから、予測不能で怖いわ」

北見さんの言葉に深く頷いた。
実際に紹介されていたら……と考えただけで憂鬱になる。

「でも、あの様子じゃ反省してないからまたやると思うよ」

「えっ、本当ですか?」

「見てみなよ。もうケロッとしてお酒飲んでるでしょ」

視線を太田さんに向けると、豪快に笑いながらビールジョッキ片手に隣に座っている人の肩を叩いている。
さっきまで申し訳なさそうな表情をしていたのに、今は見る影もない。

「太田さんはいろいろと世話を焼いてくれるのはいいけど、そそっかしいからね。いつも周りが振り回されるんだよ」

北見さんは呆れたように肩をすくめた。

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