嘘をつく唇に優しいキスを
***

ゆっくりと目を開けて、視界に飛び込んできた天井にあれ?と思う。
なんか違和感がある。
確かうちの天井の色は白だったはず。

寝転がったまま目線だけ動かしてみると、私がいるのはコンクリート調の壁に囲まれた部屋……。

どういうこと?
寝ぼけてるのかな、と目を擦る。
再び、目を開けてみてもさっきと変わらない天井が見える。

ここは私の部屋じゃない。
身体に力を入れて起き上がり、今の状況を理解するべく、昨日からの行動を思い出そうと目を閉じた。

昨日の夜、会社の飲み会があった。
その時に新庄くんの結婚話を聞いて、ついお酒に手が伸びたのは覚えている。

飲み会が終わり、帰ろうとした時になりゆきで新庄くんに車で送ってもらう事になったんだけど……それからどうしたんだっけ。

その後の記憶が全くない。
えー、思い出せない。
ひとりパニックに陥っていると、不意にドアが開いた。

「あ、起きた?」

部屋の主であろう人の声と共に、ひょっこりとよく知っている顔が覗いていて唖然とした。

「し、新庄くん……」

じゃあ、ここは新庄くんの部屋ってことなの?

「朝ご飯出来てるけど、食う?」

呑気にそんなことを言ってくる。

いやいや、それよりもどうして私は新庄くんの家にいるのか説明が欲しい。
断わろうとしたけど私のお腹は正直者で、空腹でなにか食べさせてと言わんばかりにグゥと音を立てる。
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