嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「あー、先週も飲み会があったから、たまには休肝日にしようと思って」

「そうだったんだ」

「酒飲まなくても、楽しく過ごせるからな」

会話がふっと途切れ、窓の外に目を向けた。
流れていく街並みをぼんやりと見つめる。

結婚か……。
飲み会の席で、新庄くんの彼女の話を聞くたびに耳を塞ぎたくなった。
勝手に嫉妬して落ち込んで、報われない想いをひた隠しするのも今日で終わりにしよう。
私は思い切って口を開いた。

「新庄くん、結婚するんだってね」

わざと明るい声で言うと、新庄くんの肩がわずかに揺れた。
そして次の瞬間。

「桜井には関係ないだろ」

突き放すような言葉が返って来た。

「あ……、」

一気に心が冷えていく。
新庄くんは前を向いたまま、硬い表情をしていた。
まるで、その話題には触れるなと言われているような気がする。

――関係ない。
確かにそうだけどハッキリ言われると辛いものがある。
言わなければよかったと、後悔ばかりが胸の中に募った。

「そ、そうだよね。ごめん、変なこと言って」

どうにかその場を取り繕うように謝る。

「いや、俺も言い方が悪くてごめん……」

気まずい雰囲気に包まれ、お互いに黙り込んでしまった。
車内に重たい沈黙が流れる。

やがて、私の住んでいるアパートの前に車が停まった。

「送ってくれてありがとう。じゃあ……」

シートベルトを外し、ドアに手をかけたとき、新庄くんが口を開いた。

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