嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
聞かれたから答えただけで、自分に火の粉が飛んでくるとは思わなかった。

「えっ、じゃないよ。一緒に練習して頑張ろう」

町田さんが満面の笑みでブイサインを作る。

「そうだな。おじさんばかりで風船を配るより、麻里奈ちゃんがイベントで実演して配ってくれた方が、子どもたちも喜ぶよ」

そう言って、今泉部長も賛同する。

「部長! おじさんばかりってどういうことですか? 俺、まだ二十代ですけど」

町田さんが心外そうに抗議すると、今泉部長が肩を揺らして笑った。

「まあまあ、言葉のあやだから気にするな」

子どもをあやすような口調で宥められ、町田さんは「納得いきませんよ」と苦笑いする。

上司と部下という立場でありながら、気兼ねなく冗談を言い合い、言いたいことを遠慮なく口にしている。
そのやり取りを眺めていると、この職場の和やかな雰囲気とお互いを信頼し合っている様子が伝わってきた。

それより、今泉部長にあんなふうに期待を込めて頼まれたら、断るなんてできない。
もともとなにか手伝えるなら参加したいと思っていたので、ちょうどいい機会かもしれない。


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