嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「はい。目の前で犬とか作ったら子どもたちは喜んでくれるんじゃないかなと思うんですけど」

子どもの頃、手際よく、細い風船がいろんな形になっていく過程をドキドキしながら見つめていたことを思い出す。

「なるほど、バルーンアートか。いいな」

私の提案を聞いて、今泉部長がポンと手を叩く。
すると、水内さんが少し考えて口を開いた。

「懸念点は、作る段階で風船が割れて、その破裂音とかでお子さんたちを驚かせてしまうかもしれないことですかね」

「そうだな。事前に注意書きしておくとか、対策を考えよう。よし、今年はバルーンアートでいくか」

今泉部長は満足そうに笑った。

「でも、それを俺らが作るってことですよね」

町田さんが眉をひそめ、恐る恐る尋ねると、今泉部長はゆっくりと口角を上げた。

「町田、頑張って練習しろよ」

「えっ、俺がですか?」

「当たり前だろ。お前がやらなくて誰がやるっていうんだ」

「そりゃそうですけど……」

今泉部長に指名された町田さんは不満そうに口を尖らせる。

どうやら、私の提案したバルーンアートが採用されたみたいだ。
思いつきで言ったけど、役に立てたみたいでよかった。
軽く頭を下げて会議室を出ようとしたら、町田さんに呼び止められた。

「ちょっと麻里奈ちゃんストップ! 言いだしっぺだから君にも手伝ってもらうからね」

「えっ?」

ギョッとしながら振り返ると、町田さんがニヤリと笑っている。


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