嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「そっか……。告白は俺の自己満足みたいなもんだから、気にしなくていいから」

そう言って、町田さんは苦笑いを浮かべた。

明日も会社で顔を合わせることになる。
だから、町田さんは私に気を遣わせないように、わざと軽く言って大人な対応をしてくれているんだろう。
本当は、平気なはずないのに。
そう思うと、胸が苦しくなった。

「すみません」

思わず、謝罪の言葉を口にすると、町田さんは首を横に振った。

「謝らなくていいよ」

優しい声で言う。

「あのさ……理由、聞いてもいいかな」

少し間を置き、町田さんが尋ねてきた。

「理由、ですか?」

「あ、もちろん言いたくないなら言わなくてもいいから」

そんなふうに付け加えて言ってくれるところが町田さんらしい。

理由か……なんて答えたらいいんだろう。

曖昧な理由で誤魔化すのは違う気がする。
町田さんはちゃんと自分の気持ちを伝えてくれた。
だったら、私も誠実に答えるべきだ。

心臓がやけに大きな音を立てている。
私は拳をぎゅっと握りしめ、一度深呼吸してから、口を開いた。

「叶わない片想いを、してるんです……」

「叶わない片想い?」

町田さんが小さく呟く。
私はそれ以上、なにも言えなくて視線を下に落とす。

しばらく沈黙が続く。
やがて、町田さんが静かに口を開いた。

「もしかして、片想いの相手って……」

はっとして顔を上げると、町田さんと目が合った。
その瞬間、彼はなにか察したように苦笑いする。

「……やっぱり、そうか」

「えっ」

やっぱりってどういうこと?

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