嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
疑問に思っていたら、町田さんがポツリと呟いた。

「だから叶わないんだな……」

その言葉を聞いて、胸がざわついた。
町田さんが誰のことを思い浮かべているのか、分かってしまった。
きっと、私の反応を見て気づいたんだろう。
私が誰に片想いをしているのか。

前から分かっていたことだけど、「叶わない」と他の人から言葉にされると、胸の奥が締め付けられるように苦しくなり、唇を噛んだ。
そんな私を見て、町田さんは小さく息を吐いた。

「ごめんな、言いにくいことを言わせてしまって」

「いえ……」

私は首を横に振る。

「急に気持ちを伝えて困らせたよな。断るのも、勇気がいっただろ」

その言葉に胸が詰まった。
自分のことより、私の気持ちを優先してくれる。
町田さんの優しさに触れるたび、心苦しくなる。

「それから、謝るのも気にするのも禁止だからね。分かった?」

念押しするよう、私の顔を覗き込んできた。

「……はい」

「よし! これからも今まで通り接してくれたら嬉しい。その方が俺も助かるから」

「分かりました」

私が頷くと、町田さんは安心したように微笑んだ。

「じゃ、帰ろうか。駅まで送るよ」

「いえ、ひとりで大丈夫ですよ」

反射的に断ってしまった。
これ以上、町田さんに気を遣わせたくなかったからだ。

「先輩として送らせて」

「でも……」

「いいから。それに、俺も今日は電車なんだ」

そう言われてしまえば、断る理由がなくなる。
ここで無理に断る方がよくない気がして、私は少し迷ってから頷く。

「……ありがとうございます」

「じゃあ行こう」

私は町田さんと並んで歩きだし、駅へ向かった。

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