嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
手のひらも膝も痛く、自然と涙が滲んでくる。
バッグからティッシュを取り出して血を拭っていると、不意に声をかけられた。

「大丈夫か?」

聞き覚えのある声に心臓が跳ねる。
まさかと思いながら、恐る恐る顔を上げた。

「し、新庄くん……」

彼が追いかけてくるなんて思わなかった。
しかも、こんな惨めな姿を見られてしまい、恥ずかしくなって視線をそらした。
すると、新庄くんが私の前にしゃがみ込んだ。

「血が出てるじゃないか」

「これぐらい大丈夫だから」

「大丈夫じゃないだろ。膝からかなり血が出てるぞ」

そう言うと、新庄くんは私の手からティッシュを奪い取り、傷口をそっと押さえる。

「痛っ」

「悪い。痛かったか? これ、傷口に砂とか入っているから洗い流して消毒した方がいい」

新庄くんは、傷口を確認しながら真剣な表情で言う。

「俺の家に行くぞ」

は?
一瞬、聞き間違いじゃないかと思った。

「新庄くん、なに言ってんの? 自分の家に帰って消毒するから」

必死に言い返す。
新庄くんの家に行くなんて無理に決まっている。
彼女がいるくせに、そんなことを言わないで欲しい。

すると、新庄くんが小さく舌打ちして口を開く。

「桜井、あのときの賭けを覚えてるか?」

「賭けって……?」

「バルーンアート、俺の方が先にできたらなんでも言うことを聞くって話だっただろ」

「あっ」

そういえば、そんなことを言った気がする。

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